2年8か月の放置が招いた指示処分!専任の宅建士不足リスクと自社の防衛策

行政処分実例

宅地建物取引業を営む上で、最も基本でありながら、人事異動や退職などのタイミングでうっかり法令違反に陥りやすいのが「専任の宅地建物取引士の設置義務」です。

今回は、専任の宅建士が不足した状態を約2年8か月にわたって放置したことにより、実際に東京都から行政処分(指示処分)を受けた「株式会社東京ネットワーク」の事例をご紹介します。この事例をもとに、自社でどのような点に注意し、どのような体制を構築すべきかを解説します。

1. 行政処分実例:株式会社東京ネットワークのケース

まずは、実際の処分内容を確認しましょう。

事業者名株式会社東京ネットワーク(法人番号:1011101067496)
免許証番号東京都知事(3)第95846号
本社住所東京都品川区
処分等年月日2026年3月18日
処分等を行った者東京都
処分等の種類指示

違反行為の概要:

専任の宅地建物取引士が令和3年1月12日から不足したにもかかわらず、宅地建物取引業法第31条の3第3項に定める期間内に必要な措置を講じないまま、令和5年8月29日に至るまで約2年8か月経過した

【事例のポイント】

このケースでの最大の焦点は、法定人数を満たしていない状態を「約2年8か月」もの長期間放置してしまった点にあります。採用難などを背景に後任がすぐに見つからなかった事情があったとしても、法律が定める猶予期間を大幅に超過した事実は免れず、明確な法令違反として行政処分の対象となりました。

2. 法令のおさらい:宅建業法第31条の3について

宅地建物取引業法では、事務所や一定の案内所等ごとに、業務に従事する者の数に対する一定割合(事務所の場合は5名に1名以上)の「専任の宅地建物取引士」を設置することが義務付けられています。

【宅建業法第31条の3第3項の規定(要約)】

退職や異動などにより、要件を満たす専任の宅建士が不足してしまった場合、宅建業者は**「2週間以内」**に、基準を満たすよう必要な措置(新たな宅建士の雇用や配置転換など)を講じなければならない。

今回の東京ネットワーク社の事例では、この「2週間以内」という法定期間を全く遵守できず、2年以上にわたって必要な措置を講じなかったことが処分の直接的な原因です。

3. 自社で気をつけるべきこと(実務指南)

このような行政処分を受けないため、あるいは業務停止などのより重い処分に発展させないために、宅建業者は自社で以下のポイントに注意し、管理体制を構築する必要があります。

① 退職・異動時の「2週間の壁」を意識した事前対策

専任の宅建士が急に退職することになった場合、2週間以内に新たな有資格者を採用して従事させることは、実務上非常に困難です。

  • 対策: 常に法定人数ギリギリで運営するのではなく、余裕を持った人数の有資格者を配置しておく(バッファを持たせる)ことが最善のリスクヘッジです。また、資格手当や取得支援制度を拡充し、社内の有資格者を計画的に育てておくことも重要になります。

② 「専任性」の要件を満たしているかの定期チェック

「専任」とは、単に資格を持っているだけでなく、「常勤性(その事務所に常勤して業務に従事していること)」と「専従性(宅建業の業務に専念できる状態であること)」の両方が求められます。

  • 対策: 名前だけを登録するいわゆる「名義貸し」は絶対に行ってはいけません。また、他の法人の役員を兼任している場合や、リモートワークが主体で出社実態がない場合などは「専任性」が否定される恐れがあります。定期的に働き方と専任性の実態が乖離していないか、社内監査を行いましょう。

③ 変更届出の徹底

専任の宅建士が就任・退任した場合は、名簿の変更届出を行う必要があります。

  • 対策: 新たな宅建士を配置しただけで安心せず、管轄の都道府県知事(または国土交通大臣)への届出(宅建業法第9条に基づく変更届出:30日以内)を確実に行うフローを社内で確立してください。現場の責任者と人事総務部門との密な連携が不可欠です。

④ 従業員数の変動にも注意

従業員が増えれば、必要な専任の宅建士の数も変動します。

  • 対策: アルバイトやパートタイム従業員、派遣社員であっても、実態として宅建業の業務に従事する場合は「業務に従事する者」にカウントされることがあります。人員増加時には、宅建士の割合が法定要件を下回っていないか、必ず確認するプロセスを設けましょう。

4. まとめ

専任の宅地建物取引士の設置は、適正な不動産取引を担保するための根幹となるルールです。「採用活動はしていたが間に合わなかった」「退職の報告が上に上がってこなかった」という社内事情は、行政には通用しません。

今回の株式会社東京ネットワークの事例を他山の石とし、自社の人員体制や報告フローに抜け漏れがないか、今一度社内点検を実施してください。コンプライアンスの徹底が、最終的には企業の信頼と事業の安定に直結します。