専属専任媒介契約の落とし穴!「レインズ未登録」と「建物状況調査の記載漏れ」を防ぐ実務ポイント

行政処分実例

宅地建物取引業において、売主様から不動産の売却依頼を受ける媒介契約。中でも「専属専任媒介契約」は、依頼者を強力に囲い込める一方で、業者側には迅速な情報公開や定期的な報告など、厳格な法的義務が課せられています。

今回は、この媒介契約における法定記載事項の漏れや指定流通機構(レインズ)への登録義務違反により、実際に東京都から行政処分(指示処分)を受けた事例をご紹介します。日常業務に潜む落とし穴と、自社で徹底すべき管理体制について解説します。

1. 行政処分実例:株式会社タングラムのケース

まずは、実際の処分内容を確認しましょう。

  • 事業者名: 株式会社タングラム(免許証番号:東京都知事(2)第103399号)
  • 本社住所: 東京都港区
  • 処分等年月日: 2026年3月12日
  • 処分等を行った者: 東京都
  • 処分等の種類: 指示(根拠法令:宅地建物取引業法第65条第1項)

【違反行為の概要】 被処分者は、令和6年(2026年)2月に建物2戸の売却依頼を受け、それぞれ専属専任媒介契約を締結した。しかし、これらの業務において以下の2点の法令違反が認められた。

  1. 宅地建物取引業法第34条の2に定める書面(媒介契約書)に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」を記載しなかった。(同法第34条の2第1項第4号違反)
  2. 指定流通機構(レインズ)への登録を行わなかった。(同法第34条の2第5項違反)

事例のポイント このケースでは、専属専任媒介契約という最も厳しいルールが適用される契約において、「法定書面への必須事項の記載」と「指定流通機構への登録」という、実務上の基本的な義務が抜け落ちていた点が処分の対象となりました。

2. 法令のおさらい:宅建業法第34条の2について

今回の違反に該当した2つの法令要件について、改めておさらいします。

① 建物状況調査(インスペクション)のあっせんに関する記載義務 2018年(平成30年)の宅建業法改正により、中古住宅の取引において、媒介契約締結時に「建物状況調査を実施する者のあっせんの有無」を書面に記載し、依頼者に交付することが義務化されました。これは、消費者が安心して中古住宅を売買できるようにするための重要なプロセスです。

② 指定流通機構(レインズ)への登録義務 売主の利益を守る(いわゆる物件の「囲い込み」を防ぐ)ため、専属専任媒介契約および専任媒介契約を締結した場合は、期限内に物件情報を指定流通機構に登録しなければなりません。

  • 専属専任媒介契約: 契約締結日の翌日から起算して 5日以内(休業日を除く)
  • 専任媒介契約: 契約締結日の翌日から起算して 7日以内(休業日を除く)

今回のタングラム社の事例では、より期限が短い「専属専任媒介契約」であったにもかかわらず、登録自体を怠っていました。

3. 自社で気をつけるべきこと(実務指南)

このような基本的な法令違反による行政処分を防ぐため、宅建業者は自社で以下のポイントに注意し、業務フローと管理体制を見直す必要があります。

  • ① 媒介契約書フォーマットの最新化と定期的チェック 法改正に対応していない古いフォーマットを誤って使用し続けているケースや、営業担当者がチェックボックスへの記入を失念するケースが散見されます。
    • 対策: 社内で使用している媒介契約書の雛形が最新の法令に適合しているか、定期的に法務・コンプライアンス担当者が確認を行ってください。また、システム上で必須項目を埋めないと契約書が出力できないような仕組み作りも有効です。
  • ② レインズ登録の期日管理の徹底 「後で登録しよう」と後回しにしているうちに、うっかり5日(または7日)の期限を過ぎてしまうのは、現場で起こりがちなミスです。
    • 対策: 媒介契約の締結とレインズへの登録をセットの業務フローとして組み込みましょう。例えば、「契約書を受領した当日から翌営業日までに必ず事務部門が登録手続きを行う」など、営業担当者個人のタスク管理に依存しない仕組みが重要です。
  • ③ 営業担当者任せにしない「ダブルチェック体制」の構築 書類の記載漏れや登録忘れは、担当者一人の目では防ぎきれません。
    • 対策: 媒介契約締結後、店長やコンプライアンス管理者が「媒介契約書の記載内容(インスペクションあっせんの有無など)」と「レインズ登録証明書」をセットで確認・承認するプロセスを必須化してください。

4. まとめ

媒介契約における法定事項の記載やレインズへの登録は、売主様の利益を保護し、不動産取引の透明性を確保するための極めて重要なルールです。「忙しくて忘れていた」「記載項目を見落とした」という単純なミスであっても、法令違反として行政処分の対象となり、企業ブランドを大きく毀損する恐れがあります。

今回の株式会社タングラムの事例を教訓として、自社の媒介契約書のフォーマットや、契約締結からレインズ登録までの業務フローに抜け漏れがないか、改めて社内点検を実施して業務品質の向上に努めましょう。