今回は、専任の宅建士が不足した状態を長期間放置したことにより、実際に東京都から行政処分(指示処分)を受けた事例をご紹介します。この事例をもとに、自社でどのような点に注意し、どのような体制を構築すべきかを解説します。
1. 行政処分実例:サントラスト株式会社のケース
まずは、実際の処分内容を確認しましょう。
- 事業者名: サントラスト株式会社(法人番号4010001191809 免許証番号:東京都知事(2)第102201号)
- 本社住所: 東京都千代田区
- 処分等年月日: 2026年3月23日
- 処分等を行った者: 東京都
- 処分等の種類: 指示
- 違反行為の概要: 専任の宅地建物取引士が平成30年10月18日から不足したにもかかわらず、宅地建物取引業法第31条の3第3項に定める期間内に必要な措置を講じないまま、令和5年5月19日に至るまで約4年7か月経過した。
事例のポイント
このケースでの最大の焦点は、「約4年7か月」という長期間にわたり、法で定められた人数の専任の宅建士を設置していなかった(不足状態を放置した)点にあります。
2. 法令のおさらい:宅建業法第31条の3について
宅地建物取引業法では、事務所や一定の案内所等ごとに、業務に従事する者の数に対する一定割合(事務所の場合は5名に1名以上)の「専任の宅地建物取引士」を設置することが義務付けられています。
【宅建業法第31条の3第3項の規定】 退職や異動などにより、要件を満たす専任の宅建士が不足してしまった場合、宅建業者は「2週間以内」に、基準を満たすよう必要な措置(新たな宅建士の雇用や配置転換など)を講じなければなりません。
サントラスト社の事例では、この「2週間以内」という法定期間を大幅に超過し、数年単位で放置してしまったことが明確な法令違反と判断されました。
3. 自社で気をつけるべきこと(実務指南)
このような行政処分を受けないため、または業務停止などのより重い処分に発展させないために、宅建業者は自社で以下のポイントに注意し、管理体制を構築する必要があります。
① 退職・異動時の「2週間の壁」を意識した事前対策
専任の宅建士が急に退職することになった場合、2週間以内に新たな有資格者を採用して従事させることは、実務上非常に困難です。
- 対策: 常に法定人数ギリギリで運営するのではなく、余裕を持った人数の有資格者を配置しておく(バッファを持たせる)ことが最善のリスクヘッジです。また、資格取得支援制度を設け、社内の有資格者を増やしておくことも重要です。
② 「専任性」の要件を満たしているかの定期チェック
「専任」とは、単に資格を持っているだけでなく、「常勤性(その事務所に常勤して業務に従事していること)」と「専従性(宅建業の業務に専念できる状態であること)」の両方が求められます。
- 対策: 名前だけを登録するいわゆる「名義貸し」は絶対に行ってはいけません。また、他の法人の役員を兼任している場合や、リモートワークが主体で出社実態がない場合などは「専任性」が否定される恐れがあります。定期的に働き方と専任性の実態が乖離していないか監査を行いましょう。
③ 変更届出の徹底
専任の宅建士が就任・退任した場合は、名簿の変更届出を行う必要があります。
- 対策: 新たな宅建士を配置しただけで安心せず、管轄の都道府県知事(または国土交通大臣)への届出(宅建業法第9条に基づく変更届出:30日以内)を確実に行うフローを社内で確立してください。人事総務部門とコンプライアンス部門の連携が不可欠です。
④ 従業員数の変動にも注意
従業員が増えれば、必要な専任の宅建士の数も変動します(5名に1名)。
- 対策: アルバイトやパートタイム従業員であっても、宅建業の業務に従事する場合は「業務に従事する者」にカウントされることがあります。人員増加時には、宅建士の割合が法定要件を下回っていないか、必ず確認するプロセスを設けましょう。
4. まとめ
専任の宅地建物取引士の設置は、適正な不動産取引を担保するための根幹となるルールです。「うっかり補充を忘れていた」「採用が間に合わなかった」という言い訳は通用しません。
今回のサントラスト株式会社の事例を他山の石とし、自社の人員体制に問題がないか、今一度社内点検を実施してみてはいかがでしょうか。コンプライアンスの徹底が、最終的には企業の信頼と事業の安定に繋がります。


